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2010年12月 5日
覚えるということ
脳と記憶との関係は、おおかた明らかになっています。認知症では、様々な記憶の低下が見られます。大脳皮質の萎縮が進んでいくアルツハイマー型認知症であっても、種の保存というか、条件反射的な側面が強い、感情の記憶については、保持されやすい。たとえ、数秒前に何があったかを忘れる状態にあっても、その時に生起された感情は、後になっても無意識的に想起可能である場合が多い。端的には、相手に嫌な対応をされた内容自体は忘れるが、嫌な対応をされたという感情は、残りやすいというもの。具体的に言えば、もの忘れが激しい患者に対して、「どうせ覚えていないんだから、丁寧な対応なんてしなくていいや」というような気持ちで接すると、患者の方は、どんなことをされたかは覚えにくいが、嫌な対応をしてきた相手という記憶の方はきちんと積み重ねることが出来ているということ。
そもそも感情・情動の記憶の脳局在としては、扁桃体にあると考えられており、アルツハイマー型認知症での萎縮(&機能低下)も認められるが、他の記憶機能に比べると、保持されやすいものとなっているようです。
認知症によって、いろんな社会生活で身につけてきた汚れた服を脱ぎ捨てて、純粋さを取り戻すといったところなのかもしれません。

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